イーサリアムを営利企業向けに販売する謎めいた企業「イーサリアライズ」の正体とは
ウォール街とワシントンが本格的に仮想通貨に動き出す中、Etherealize(イーサリアライズ)が金融機関のEthereum導入を促進するために活動を開始した。
金融業界が次々とステーブルコインやトークン化商品の発表を進め、規制整備も進む中で、Ethereumは確かなインフラを持ちながらも、大手機関向けに明確な営業活動を行っていなかった。そこで登場したのが、イーサリアライズだ。
① イーサリアライズとは?
イーサリアライズは米デラウェア州に拠点を置く企業で、営利企業(株式会社)と非営利団体を組み合わせたハイブリッド型の組織。「Ethereumを世界の主要金融機関が選ぶデフォルトの公共ブロックチェーンにする」というミッションを掲げつつ、Ethereumの中立性を守ることを目標としている。
Ethereumはこれまで、競合他社のように金融機関に直接売り込むビジネス開発部門を持たず、あくまでもコミュニティ主導でオープンソースの理念を貫いてきた。しかし大手金融機関は理念だけで動かず、自分たちが理解できる言葉でEthereumのメリットやロードマップを示し、導入支援を行う存在が必要だ。イーサリアライズはまさにその役割を担う。
具体的には、営利部門では金融機関向けに資産のトークン化、EthereumベースのDeFi活用支援、企業向けのレイヤー2ソリューション導入支援、ダッシュボードやスマートコントラクト開発などを提供。非営利部門では、Ethereumに関する研究活動支援や、中立的な公共政策提言を行い、金融機関の要望をEthereum開発チームにフィードバックする役割を担っている。
② イーサリアライズのメンバー
イーサリアライズの共同創業者は、ヴィヴェック・ラマン(Vivek Raman)、ダニー・ライアン(Danny Ryan)、グラント・ハマー(Grant Hummer)、ザック・オブロン(Zach Obront)の4名。
ダニー・ライアンは元イーサリアム財団(Ethereum Foundation)の研究者で、「マージ」(Ethereumのプルーフオブステークへの移行)に中心的役割を果たした。Ethereumの技術開発と金融機関のニーズを結びつける。
グラント・ハマーはEthereumコミュニティで10年以上活動し、Vitalik Buterinをはじめイーサリアム財団とも密接な関係を持つ人物。イーサリアライズの戦略責任者としてEthereumの文化や価値観を保護する。
ザック・オブロンは高度なセキュリティ技術やエンタープライズ向けシステムの構築に定評があるエンジニア。金融機関向けの製品開発とエンジニアリングを統括する。
この4人は、金融機関が信頼できるビジネス経験と、Ethereumコミュニティでの強い信用を併せ持つ稀有なチームだ。イーサリアライズはイーサリアム財団から設立資金の提供も受けており、Ethereumエコシステムとの深いつながりを活かした活動が期待される。
③ なぜ今なのか?
市場の混乱はあったものの、今こそEthereumを金融機関に本格導入する絶好の機会だ。
Ethereumはもはや単なる実験ではなく、確固たる社会インフラとなっている。10年以上にわたりダウンタイムがゼロという実績からも、その安全性と信頼性は実証済みだ。金融機関もこれを認識し始めている。
また米国の規制環境も整備が進み、金融機関が公的なブロックチェーン上で事業を行う環境が整いつつある。実際、多くの機関がすでにEthereum上での事業展開を開始している。
資産のトークン化:ブラックロックやフランクリン・テンプルトンがEthereum上でトークン化商品を稼働させ、他の金融機関も追随している。
ステーブルコイン市場:Ethereumはステーブルコインの取引高の大半を占めており、この市場への金融機関の参入も急増している。
要するに、Ethereumは技術面でも信用面でも金融機関のニーズを満たせる状態だ。あとは金融機関の意思決定者にEthereumの価値を正しく伝える存在が必要であり、イーサリアライズはまさにその役割を担っている。