最近、仮想通貨市場の価格はトランプ元大統領の関税政策の方針転換などにより、やや回復傾向にある。しかし、規制が整いつつあるにもかかわらず、業界内では重大な問題が表面化している。
それは「開発者が減っている」という問題だ。
この議論は数カ月前から話題になっていたが、今週あるツイートをきっかけに再注目された。そのツイートでは、仮想通貨分野の開発者活動が顕著に低下していることを示すデータ(ArtemisとElectric Capitalの資料)が共有されていた。
その内容は明快かつ衝撃的だった。2022年をピークに、週単位のコードコミット数は約40%も減少し、新規開発者の数も減り続けている。実際、アクティブな開発者は前年比で7%減った。
多くの人が気づき始めている。「ビルダー(開発者)たちはどこへ行ってしまったのか?」と。
答えは明白だ。
いま開発者の関心はAIに向かっている。2022年後半にChatGPTが登場し、それ以降、AI関連の開発活動は爆発的に増えた。2024年にはGitHub上の生成AIプロジェクト数が前年比で98%増加。AI関連のレポジトリも2023年から2024年にかけて70%増え、GitHubで活動する開発者の25%がAIに取り組むようになった(2023年は18%)。
仮想通貨は完全に後れを取った。
優秀な開発者の多くがCryptoとAIの融合領域に移ったが、それ以上に純粋にAI分野へ完全に転向した者も多い。JetBrainsの2024年の開発者レポートによれば、AIを組み込んだアプリ開発をしていると回答した開発者は18%だったのに対し、ブロックチェーンと答えたのはわずか3%だった。
資金の流れも同じだ。VC資金は仮想通貨インフラ分野には流れ続けており、2024年には過去最高の55億ドルが投じられた一方、アプリケーション層への資金提供は伸び悩んでいる。さらに、開発者を支えるべき助成金制度なども本来の目的とは程遠い状況で、熱心なビルダーほど燃え尽きてしまうという現象が起きている。
仮想通貨業界の文化にも問題がある。短期的な投機ばかりが注目され、実質的な価値を持つプロダクトを作る開発者が報われにくい。ミームコインが数分で数百万ドルを集める一方で、本当に役立つアプリはほとんど注目されず、真剣に議論するほど冷笑されてしまう。オープンに開発することがこれほどまでにリスクを伴う状況はかつてなかった。
しかし、その中にも希望はある。
開発者の世界的分布が変わりつつあり、現在アジアが開発者数で1位となった。2024年に新規仮想通貨開発者が最も増えたのはインドで、ソラナ(Solana)の開発者数は前年比で83%増加した。また、EthereumエコシステムではBaseが新規コードの42%を占めるなど、複数のブロックチェーンを跨いで活動する開発者が増えていることも、好材料と言える。
さらに、米国では規制環境にも前向きな変化が起きつつある。明確な規制が整えば、プロジェクトのリスクが下がり、新たな資本が投入されやすくなる。既に大手VCはワシントンでの規制整備を見据えており、状況が整えば米国拠点のチームの開発活動が再び活発化する可能性もある。
次の仮想通貨ブームは単なる価格の急騰ではなく、「実際に役立つツールやプロトコル」が主役になるだろう。ユーザーが実際に使い続けたくなるようなプロダクトが重要になる。
結局、開発者は消えたのではなく、よりリアルな価値を感じられる領域に移動しただけだ。
仮想通貨業界に必要なのは、単なる開発者の数ではない。開発者を真に支える仕組みや意見を明確にしたエコシステム、そして開発者を第一に考える文化そのものだ。
ムードではなく、ユーザーを大切にする姿勢が求められているのだ。